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金色のコルダ3の二次創作小説ブログです
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ずいぶんとお久しぶりです。
生きてました。
いろんなものに浮気しましたが、舞い戻ってまいりました。
気づけば学生から社会人へと変化しましたが、
相変わらずの日々を送っています。

更新がないにも関わらず、ブログに訪れてくださり、ありがとうございます。
久しぶりにカウンターを見て驚きました。


最近はちまちまとまたちあほうの妄想をしつつ、
以前より好きだった新八木、絶対好きだからと踏みとどまっていたにもかかわらずずぶずぶした長八木に頭を抱えています。

今年度の目標は、ちあほう本を一冊つくりたいなぁと思っていたり。
あいかわらずまったりのんびりペースですが、ちまちまと更新を再開したいと思います。

また、腐垢の方を作成しましたので、もし気になる方がいらっしゃればどうぞ閲覧ください。
おそらく作品投下率もTwitterの方が高いです。


ということで、久しぶりの更新は「ちあほう」です。
毎度のことながら腐向けですのでご注意ください。

拍手[3回]



 知らず触れていた温もりが離れていく気配に、引き寄せられるよう瞼を震わせる。滲んだ視界が暖かな色を拾い上げて、肺から送り出された吐息が音もなく唇を震わせた。
 暖かな布団の内側でシーツを撫でてみたところで、伝わる温度はありもしない。今日もか、と覚醒しきらない脳に言葉がにじんだ。
 遠ざかった気配は、こちらが口を開く間もなく傍へと寄り、わずかな紙擦れの音を響かせる。特注だったか。自分が腰を掛ければ、眠りへといざなわれてしまいそうな座り心地の良いロッキングチェアが、きぃきぃと音色を秒針に重ねた。
 ちあき。閉じた口腔に言葉を転がして、規則の正しいその音に誘われるように微睡みへと身を投じる。
 相も変わらず体温の低い自分から、シーツへと溶けだす温度があるわけもなくて。ただただ冷たい白い海に薄い波をたてた。


『お前が選べ』


 いつだったか。
 目の前に広げられたカタログと、至極当然のように言ってのけた幼馴染の姿が、言葉と共にふいによみがえった。

――あぁ、そうだ。確かあれは、二人で暮らしはじめる少し前の話だ。


 面白いほど脳裏に焼き付いたその映像は、時間がたった今でも容易に思い出され、少しばかり若い声が耳元で揺れる。
 意気揚々と広げられた腕の先。かき集めましたと言わんばかりに、寝ころびなれたベッドの上いっぱいに広げられたそのカタログを、滑らかなシーツを撫でるさなか手に攫い開いてみれば、並ぶ写真はどれもベッドの写真ばかりで。おもわず、気の抜けた息が唇を震わせた。
 家を出る。そう、本格的に会社を立ち上げたときに話を聞いてはいたから、この大量のカタログはすべて千秋の新居に置かれるものなのだろうと、容易に想像することはできたけれど、それを今、自分に選べと当たり前のように言ってのける意味が、いまいちカチリと思考にはまらなかった。
 いきなりどうしたん。だとか、千秋のやろ。だとか。
 手にしたカタログを捲り問いかければ、そのつど不機嫌を募らせる千秋の様子に小首を傾ける。部屋に入った当初の軽やかな声音はすっかりなりをひそめていた。


『どないしたん』


 同じような言葉を、先とは違う意味で繰り返して。少し上にある千秋の顔を見上げる。
 別に。なんて、そっけなく答えていても、不機嫌を隠す気はさらさらないようで。どうせ一緒に使うんやし、蓬生のがこういうのにうるさいやろ。と、反らした視線が、隣にあるカタログのひとつに向けられた。
 照れか。拗ねか。掌に攫ったそれに目をやりながら、続いた次の言葉は、何気なく流された先のセリフに引き摺られて、左から右へと流れていく。


「……は?」


 肺から押し出され唇を撫でた吐息が、瞬きと共に空気を震わせた。
 秒針の音色に呼吸が追い抜く。
 閉じた瞼の裏にある影は、変わらず不規則に紙を擦る音を響かせて、時折向けられる視線を肌に感じた。
「ちあき」
 形作った言葉のあとをついて、瞼の向こうへ瞳を向けた。
 橙色のやわらかな光に滲んだ世界に瞬きを落として、視界をなじませる。ほろりと目じりから溢れた小さな雫が、薄い筋を生み出し、シーツに跡を残すこともなく消えていく。
 瞬くたび鮮明になる輪郭が、長く伸びた影を縁取った。


「悪い。起こしたか」


 サイドボードに書類を追いやった流れのまま、こちらへと伸ばされた手が頬を撫でる。普段よりも抑えた声量で問いかけられた言葉に、緩慢な動作で首を振った。
 溶けるようになじむ体温が、知らず強張った体を解いていく。
 そうか。と、またすぐに離れていこうとする手をとり、頬に摺り寄せた。長く深く息を吐き出し、緩んだ口元を引き結ぶことなく、口になじんだ名前を形作る。
 蓬生。と、咎めるようにこちらを呼んで返す千秋が、指先に少しばかり力を込めた。


「もっかい寝るから、手ぇかして。な?」


 絡めたまつげを解き、上目遣いに千秋の姿をとらえる。喉仏が、ごくりとわかりやすく影を動かした。こみ上げた笑みを隠しもせずに掌へと触れさせる。指の腹で重ねた指の背をなぞった。弦に触れて固くなった指先の感触を確かめるように指を絡め、もう一度瞳に映した千秋の名を空気に混ぜる。


「……もう少しそっち寄り」


 たっぷりため込んだ息を合間に満たす。かけられた言葉に従いわずかに体を後ろへ引いて、かぶった布団を持ち上げた。
 冷えた空気が千秋の体よりも先に入り込み、体を震わせる。
 思わずひいた腰を、いつのまにか回された腕に取られ、隙間なく距離を詰められた。


「っ、あんなぁ。千秋、寒いんやけど」
「すぐ馴染む。我慢せぇ」
「横暴やなぁ」


 そもそもベッドに招いたのはそっちだろ。と、ため息交じりに続けられ肩を揺らす。拗ねた子供をあやすように、首元へ顔をうずめる千秋の頭を抱きしめるように腕を回した。纏った寒気は、言葉通りすぐに千秋の体温にのまれていく。


――これが一番の安眠剤やって千秋は気づいとるんやろか。


 結局、積み上げたカタログは目安ほどにしかならなくて。
 あの通いなれた。眠りなれたベッドに似た感触を見つけたのは、まだ少し先の。両親へ千秋と共に暮らすことを伝えたすぐ後の話。それでもやっぱり寝ころんでみれば、真新しい香りに体はなれなくて、何度も寝返りをうっていたことを覚えている。


「あったかいなぁ。ちあき」
「人のことカイロにすな」


 撫でた背を叩かれ咎められる。
 だいたいまだ仕事が残ってるのに。だなんだと言いながら、次第にまどろんでいく声音と鼓動を子守歌に、ゆっくり瞼を下ろした。
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プロフィール
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藍染
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女性
趣味:
読書/ゲーム
自己紹介:
藍染と書いて「あいぞめ」と読みます。
・ちあほう
・新八木
・長八木
がメインになれたらいいな。
小説は基本「続き」の中に収納しています。

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