こんばんは。
今日は久しぶりにしょた蓬生さんをひっさげてきました。
夏も終わりましたが、夏のお話です。
なぜかというと、神南イベの時にお会いした方に押し付けた本にぶちこんでいた話だからです。
あと一本。七夕の日の榊土岐があります。
それはまた後日upしますね。
季節外れとかもういまさらなのできにしない!
一応書く予定が決まっているものを下にメモの意味でリストアップしておきます。
・しょた蓬生さんと千秋とかなでちゃんと八木沢さん、マリンスタイル。
・月光華シリーズの最終話。
・リクエストのしょた蓬生さんの話。
・そして個人的にかきたい睦ちゃんとしょた蓬生さんの話。
順番は前後するかもしれませんが、これらを書いていきたいと思ってます。
本編はいつものごとく「続きから」よろしくお願いいたします。
今まで関わってきた人の中で、両親を除き、最も長く付き合っている人物がいる。
自分にとって、その存在は間違いなく指針であり、太陽であり、また同時に、どうしても手の届かないものであった。
と、まぁそんな話はどうでもよくて。
何がいいたいのかと言うと、単純にそこまで長く共に時を過ごしている幼馴染といえども、知らないことがまだあったのだということだ。
「ほんま、嫌味なくらい手先器用やなぁ」
「お褒めに預かり光栄だよ」
「別に褒めてへんわ。阿呆」
しゃがみこみ、覗き込んだ浅い水槽。
周囲は祭囃子の喧騒で賑わい、その渦中にあるこの出店もそれなりの客を集めている。
ぷかぷかとほんの少しだけ水の入った風船が浮かぶ水槽。
いわゆるヨーヨーつりの出店の一角を陣取って、周りに習い少し祭りの雰囲気にあてられてヨーヨーつりに勤しんでいた。
の、だけれど。
バッシャーン。
と、水音が響き、少し遅れて飛び散った水しぶきがほんの少し頬を濡らす。
「いや、ほんま……千秋がこういうのん苦手やてはじめて知ったわ」
小さくなったことによって縮んでしまった手で頬にかかった水を拭い、苦笑する。
視線の先には、からっぽの取れたヨーヨーを入れるための容器と、先をなくした紙縒りを手にした幼馴染の姿が映っていた。
事の発端は、数時間前に遡る。
もうすっかり慣れてしまった幼い身体で、寝転びやすくなった菩提樹寮のソファーを陣取って昼寝というよりは夕寝という方が正しい時間帯に寝転がっていたところ。
「お祭りに行きましょう!」と、小日向ちゃんこと小日向かなでの一声に、幼馴染である東金千秋が乗ったのが、そもそものはじまりだった。
そこからいつものメンバー。神南高校管弦楽部の主力メンバーである自分と、千秋に芹沢。そして、星奏学院オーケストラ部の主要メンバーの五人を合わせて近くで催されている夏祭りへと出かけることになったのだ。
途中、どこかへ消えてしまった如月兄を探すためにその弟と水嶋とは別れ、なれているのかのんきに「ヨーヨーつりで勝負しませんか?」と自信満々に言い放った小日向の言葉に、まんまと乗せられた千秋により、その場にいた全員で急遽ヨーヨーつり大会がささやかに催されることになった。
あの時、自信満々な千秋を見て、あぁ、こういうんもやっぱそつなくこなすのだろうと、思っていたのだけれども……。
「千秋、もう諦め。ほら、俺がとったんやるから、な?」
結果、一つもとれずに一回目の勝負を終えてしまい、もう一度だという声に付き合い計三回。ヨーヨーつり大会は催されたが、結果は変わらず、千秋は最下位のままに終わった。
提案者の小日向はさすがといったところか、変に手先が器用な榊に負けはしたものの、堂々たる二位に君臨し、自分はと言うと人並み程度に一、二個吊り上げて手首に下げている。
「千秋、ほら。そろそろ行かな花火はじまってまうで。その鬱憤はあとでヨーヨーと一緒に榊くんにぶつけ」
「おい」
「かわいい子供の冗談やろ。大目に見てくれな、心の狭い男はモテへんよ」
大量に取ったヨーヨーの中から適当に選んだ二個のヨーヨーを右手の中指にひっかけた榊と軽る口を叩き合っていると、横にしゃがみこんでいた千秋が緩慢な動作で立ち上がる。
蓬生。と名を呼ばれて自分も立ち上がった。
人ごみにはぐれてしまわないように千秋に抱き上げられ、若干不貞腐れた顔が眼前に迫る。
少し膨らんでいそうな頬を、水風船で押して、からかうように笑った。
「ちーちゃん、そんな拗ねんとってや」
「別に拗ねてねぇ」
「じゃあ、いじけとう?」
「だから、いじけてねぇ」
「はいはい。わかったわ」
「おい蓬生。お前馬鹿にしてるだろ」
「別に? かわええなぁって思っただけやよ」
眉間に皺を寄せて。
どうして取れないんだ。すぐに切れるんだ。などと考えながら水面に浮かぶヨーヨーと格闘する幼馴染の姿はなんだか新鮮で。いままでいろんなものを共に見てきたと思ったが、そういえばこうやって祭りに来て出店で遊ぶなどはじめてのことだったのかもしれないと思い出す。
まぁ、あのころは人ごみにくることすら自分の身体にはあまりよくはないことだったのだから仕方のないことだったのだろうけど。
それでも、幼い頃ではきっと、こうやって普段は許されない。暗くなった世界で友人と、少ない親からのお小遣いを握り締めて遊ぶ非日常は何にも変えがたい思い出になるのだろう。
そうして、みんながその思い出を胸の奥に抱いたまま成長していくのだろう。
自分が、あてはまらなかっただけで。
「おい、蓬生」
「……ん?」
「次は何がしたい」
「は? 千秋、そろそろ花火の時間やいうたやろ?」
「負けたままは癪だからな。付き合え」
いつの間にか、不貞腐れていた顔は消え失せ、新たな標的を見つけるために瞳を忙しなく動かしている。
新しいおもちゃを探すようなその瞳は、子供の姿になってしまった自分より、なんだか千秋の方が幼くなってしまったように感じさせる。
けれど、ソレも悪くないのかもしれない。
「せやね。それやったら輪投げでもしよか」
わなげの出店を指差し、提案する。
望むところだと、声を躍らせて千秋の歩みがそちらへと向かう。
「榊くん。小日向ちゃん。第二試合らしいで」
少しそれてしまった二人に声をかけて、おいでおいでと手招きをする。喜んで駆けてくる小日向に、まだやるのか、と少し呆れ顔の榊が続いた。
「ほな。今度はちゃんとかっこええとこ見せてや?」
「ハッ。当たり前だ」
今度こそ自信があるのか。それともまた、根拠のない自信なのか。とにもかくにも自身満々に言い放たれた彼らしい言葉に、口元が緩む。
「千秋」
もう一度、手に持ったヨーヨーを千秋の頬に押し付ける。
「ありがとう」
身体は幼くなろうと、精神は高校生の自分のままで。こうやって暗くなってから外に出ることすら珍しくなくなってはいるけれども。やはり、祭りとは非日常的な空間なのだろうか。
らしくもなく踊る心に、同じように踊ってくれる幼馴染にそっけなく礼を述べれば、相手からもそっけなく、ただ「あぁ」と短い言葉が返ってきた。
・ちあほう
・新八木
・長八木
がメインになれたらいいな。
小説は基本「続き」の中に収納しています。
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