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金色のコルダ3の二次創作小説ブログです
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「希望の幻」に拍手ありがとうございます。


こんばんは。
今回は先日のシリーズの続きではなく、短編をぶら下げてやってきました。
通学中に背中を合わせて二人乗りをする学生をみまして、
東土をあてはめたらなんだか不釣合いながらもしっくりきたのでたまらず妄想をしてしまいました。

こうだったらなぁというただの妄想から。

今の運転手は蓬生さんだけど、
昔は千秋だったらいいなぁって。


あまりかぷ要素はありません。



いつもどおり「続きから」お願いいたします。



拍手[5回]






「よ、よかったら……一緒に帰ってくださりませんか……っっ?」

門を出た直後のことだ。
おそらく近所にある他校の制服を着た生徒が立っていて、他人事に見ていた所で声をかけられた。
真っ赤な顔をして、少し俯き気味の視線の先にいるのは自分。
どうやら他人事ではなかったらしいと、どこか他人事のように思いながら聞いていた。


自分よりずいぶん低い位置にあるその女生徒の瞳には緊張と不安からか、うっすら涙が浮かんでいる。
ふわふわとした髪に細い肩。
絵に描いたような『女の子』の申し出。他校だのに一緒に帰ってくれと頼むのは、どれほど勇気がいったことだろう。
それも、逆に他校だからこそできた行動なのだろう。
この神南高校に通っている生徒にとっては日常になっている風景を、彼女は知らない。
だからこそこうやって神南の生徒がかけることのできない青春の一ページには欠かせない一コマの台詞を自分へとぶつけることができたのだ。


「せっかくの申し出は嬉しいんやけど……ごめんな?」
「そっそうですよね……っいきなり知らない人間に声をかけられたら……」
「ちゃうちゃう。一緒に帰ってはあげたいんやけど……先約がおるんよ。だから……ごめんな?」


小さく小さくなっていく彼女の頭を撫でる。
いつの間にかさげられていた瞳がぱっと跳ね上がった。
眉を下げて困ったように微笑みながらもう一度謝罪の言葉を口にする。
彼女はもう何も言わなかった。
最後に一度だけ泣き出しそうな瞳を、今度はきちんと自分の瞳に映して、深く頭を下げたかとおもうと、そのあとはもう顔も合わせずに背を向けて去っていった。


「……お前に女を泣かせる趣味があったとはな」


ふぅ。と彼女の背を見送りつつ吐き出した息と共に正門の柱に背を預ける。
見計らったようなタイミングで横からかけられた言葉にもう一つ、さらに深いため息をついた。


「……千秋ほどではないと思うんやけど……って、立ち聞きしとったんか」
「俺はいつも通りの行動をしていただけだ。普段と違う行動をしたのはお前だろ」
「まぁ、たまにはイレギュラーがあってもええやろ」


背を柱から離し、振り返る。
神南の制服に合うようにデザインされたスクールバックを前カゴにいれ自転車を押す幼馴染の姿。
見慣れた、日常の風景に意識せず頬が緩む。


片手で自転車を支え空いた右手がこちらへ差し出される。
その手に前カゴに入れられた千秋のものと同じデザインのスクールバックを預けた。
バックが同様に前カゴに入れられ、千秋が自転車にまたがったことを確認してその後ろの荷台部に横乗りの形で腰掛ける。


「ほんなら、今日もよろしく頼むわ。運転手さん」


背に頭を預ければ、任せておけという頼もしい声と共にぐっと身体に力が込められるのが伝わってきた。


神南高校は私立の所謂金持ちの子息令嬢が通う高校だ。
そこに通う生徒のほとんどが家から用意された出迎え用の車で通学している。
一応自転車置き場は用意はされているが、自分たちのように自転車で通学している生徒は極稀にしか居ない。


「……にしても、千秋は家から車が用意されとるやろ?ええのん?」
「何を今更なことを言ってんだ。だいたい、俺が用意されたモノに乗ると思うか?」
「んー思わんなぁ」


確かに、今更な質問だった。
こうやって千秋と自転車で通学するようになって早数年。
最初は好奇の目で見られた通学方法ではあったが、今ではもう当たり前の風景となり、特別な意味を持って向けられる視線はない。
それほど日常になったもの。
最初は苦労して上った神戸の坂も、ある程度の斜面であれば難なく上れるようになった。


まぁ、この坂の多い神戸で自転車をこぐことがあまり向かないことは理解っているのだけれど。


「……俺だけ、楽しとるしなぁ……」
「ん?何か言ったか?」
「いや、何も。――ぁ、千秋。止めてもらってえぇ?」



誤魔化す意味もこめて話を折る。


「どうした?何か問題でも……」
「コンビニ、よってこ。暑いしアイスでも食べたいわ」


タイミングよく視界に入ってきたコンビニエンスストアを指差して提案を持ちかける。
車道を挟んで向かい側にあるそこに若干渋りはしたものの、この暑い夏の夕暮れの中。こぎ続けるのにも疲れたのだろう。
少しだけだぞと約束を取り付けて再びペダルをこいだ。

 








「はい。お駄賃」
「はぁ……?」


コンビニで購入した二対のアイスクリームを半分に割り、その片方を千秋に差し出す。


「なんだいきなり」
「んーいつも頑張っとう俺の運転手さんにたまにはご褒美あげなあかんなぁ思て」


なんだそれ。
苦笑しながら返された言葉に同じように苦笑を返す。
サドルに腰を預けた千秋が差し出したアイスを手に取ったことを確認して手を離す。
同じように荷台部に腰掛けてアイスをくわえた。


しゃりしゃりとした氷の粒が口内を通り喉に流れる。
火照ったからだが冷やされていく。


「あと一年。待っとって」
「……?何をだ」

唐突に口にした言葉に、千秋の視線がこちらへ向けられる。
けれど、視線をあわせることなく、浮かび始めた星空を見上げた。


「千秋より一年はよ車の免許とれるやろ。あと一年したらとれるから、取れたら運転手交代や」


随分長い間運転手を任せてしまったけれど。
千秋が免許をとるまで。今の運転手が千秋のように、来年からの運転手は自分になれるよう。


「せやから、あと一年」


空を見上げた視線をさらにあげて、こつんと後ろにいる千秋に頭を預ける。


「よろしく頼むで。……俺の運転手さん」




まぁ、さすがに学校に自動車でくることはできないから、通学はいつも通りなのだろうけど。
そんな言葉は飲み込んで、「あぁ」と短く返された言葉に笑みを零した。



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藍染
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藍染と書いて「あいぞめ」と読みます。
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