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金色のコルダ3の二次創作小説ブログです
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「金木犀の午後」に拍手&コメントありがとうございました。
さすが東金部長のお誕生日。みなさんたくさんの拍手ありがとうございます。

さて、今回は東土です。
「月光華」
「扉の向こう」
「希望の幻」
と続いたプチシリーズの最終話です。
いろいろと詰め込みたい要素があったのにうまく詰め込めなかった後悔からちまちま派生の話が今後でてきそうかもしれない……
あと個人的にリハビリする蓬生さんを見守る千秋がみたい。

四部作となったこの作品ですが、ツイッターでお世話になっている方からいただいたネタでした。
いやはや本当にもうこの方とネタトークするのがとても楽しくてですね…筆が進みます。

ここしばらく熱を出して寝込んでいて更新頻度は落ちていましたが、
(この三連休の閲覧数の多さに恐れおおのいてます)
また更新頻度上げたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします!


というわけで、本編は「続きから」お願いいたします!
感想やらリクエストやらいただけるととてもよろこびまs((



拍手[7回]





「戻ってこい」
『生きてくれ』


幼くもしっかりした。
小さくて大きな千秋の声に重なるようにして、聞きなれた彼の声が、聞きなれない声色で耳に届けられる。
力強いのに、どこか怯えているような。すがりつくような音。
千秋らしくないと思うのに、千秋らしい。
千秋が自分を呼んでくれている。
光の先、見えるはずのない自分と同じ程の背丈をした千秋の後姿が見えた気がして、幼い千秋の背に回していた左手を、真っ白な部屋の先へと伸ばた。
果てへ、果てへ。
千秋へ届くように。





「……っ、生き、たいっっ」


それは、はじめて口にした。
幼い頃から目を逸らし続けていた、自分の本当の願いだった。

 









 

いつの間に、目を閉じてしまっていたのだろう。
気づいたときにははっと目を見開いていた。
視界に映し出されるのは白。
先ほどと変わらない色なのに、どこか温かみを感じてほっと息をつく。
ぴっぴっと、先ほどまで無音だった世界には存在しなかった。無機質な機械音が妙に現実味を帯びて耳に届いた。

 


――生きている――




ぐっと確かめるように手を握り締める。
そこではじめて、自分の手を包むように握り締めている大きな掌に気づいた。


「ん……」


視線をそちらへ向ければ、もぞりと動く影が見えた。
もう一度、手を握り締める。
暖かい。間違えるはずもない体温。


「ち、……あき」


自分はどれほど眠ってしまっていたのだろう。
発した声は酷く掠れていて、小さなものになってしまった。
だというのに、その音は無機質な機械音だけが響く病室に負けることなく響いて、がばりと手元にあった影が勢いよく身を起こした。



「――っっ蓬生!!!!」


安堵からか、泣きそうな千秋の顔が視界いっぱいに映される。
夢か現か。あの純白に染められた世界で幼いとはいえ傍にいたというのになんだか酷くその顔が懐かしくて鼻の奥がつんとなった。
もう一度、千秋と名を呼べば、応えるように名を返される。
左手に力を込めれば、はっきりとした感覚が伝わってくる。


あぁ、これは現実だ。


一度現実だと認識したはずなのに、今ようやく本当の意味で実感する。


「千秋が、連れ戻してくれたんやね……」


両腕にすっぽり抱え込んでしまえない。大きな背中。
腕を回せば、僅かに震えが伝わってきて申し訳なさと同時に愛おしさがこみ上げる。


「俺の手を引いて、俺をここに呼び戻してくれた」


ありがとう。
口元にある彼の耳に囁けば、まるでもう離さないというように抱きしめられていた体が離される。
赤い目を、さらに赤くして。
隠すことのできない耳が朱色に染まっていた。


「どんだけ、心配したと思ってんねん」
「ん、ごめん」
「ゆるさねぇ」
「あらら、ご機嫌斜めなちーちゃんのご機嫌はどうやったらなおってくれるんやろね」


からかうって言えば、阿呆と軽く額を小突かれる。
自分が寝ているベッドの端に腰掛けた千秋は指を絡めるように手を握りなおした。


暖かい。
現実だ。
これは、現実だ。
夢じゃない。
生きている。


生まれてはじめて心の底から怖いと思った。
千秋を置いていくことを。
千秋の傍にいられないことを。
心の底からはじめて願った。
生きたいと。


その願いが叶えられたのかはわからない。
もともとこうなるものだったのかもしれない。
それでも、信じられずにはいられない。


あの真っ白に染め上げられた世界。
自分を呼び戻したのは。
自分の本当の願いを吐露させたのは。
ほかでもない。
この手を繋ぎとめてくれている彼なのだと。



「……退院したら、買い物いこか」
「あ?」
「手袋。今年も買ってくれるんやろ?」


絡めた指に力を込める。
ようやく合わされた視線に自然と顔がほころぶ。



「あぁ。そうだな」


指きりげんまんなんて、昔は嫌いだった。
約束すること自体苦手だった。
守れないことが多かったから。
守れないとわかっていたから。


けれど、


「約束やよ」


小指は絡めない。
ヴァイオリン奏者らしい少し固くなった指先。
そっと撫でて窓の外へと視線を映した。




すっかりと高くなった青空が目に染みて一筋涙が零れた。

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プロフィール
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藍染
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自己紹介:
藍染と書いて「あいぞめ」と読みます。
・ちあほう
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・長八木
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